2013年07月25日

倫理追加(クライアントとの性的関係)

今週末、厚生労働省のキャリアコンサルタントの資質確保体制整備事業の実務研修を実施する指導者に「倫理」の授業をするので、もう一度倫理の本を読み直しています(4日の中の2時間ですけど、そのために2日ぐらい資料読んでいる感じ)
昨日倫理の本を紹介しましたが
http://xn--cckva6n2a9027a6l0c.jp/article/369936906.html
その中で紹介した水野修次郎先生の1つ前の本に、クライアントとの性的関係が如何に害があるかを明確に書いてありました。カウンセラーが最も陥りやすく、クライアントの害も大きい内容ですので、けっこう大幅な引用ですが紹介したいと思います。
「よくわかるカウンセリング倫理」(水野修次郎著)
(以下引用)
ハーリとコウリーはその著においてクライアントに及ぶ危害を10項目あげています。
1、両面価値
カウンセラーと性的な関係になったクライアントは、カウンセラーに対し強い愛着を感じ別れることを恐れていますが、同時に強い影響力を感じて支配されることへの恐怖が存在します。性的な関係を強要されたと通報することによって、お世話になったカウンセラーへの社会的地位を著しく傷つけることを恐れます。
2、罪の意識
クライアントは、自分の落ち度があってこのような性的な関係になったと思ています。もしかして、自分が誘ったのではないか、このような関係になる前にきちんと断ることはできなかったか、という思いで悩みます。
3、空虚感と疎外感
カウンセラーとの性的関係によって、クライアントは自分の価値が著しく落ちたと感じることがあります。そのために、自分だけが他の世間と遮断された状態に思える場合もあります。
4、アイデンティティと役割の混乱
クライアントは、カウンセラーの必要性を満たそうと努力するようになります。その結果、クライアントがカウンセラーに対して責任感を増します。どのような関係が安全であるか、どこまでがしなくてはいけないかが混乱して分からなくなります。
5、性に対する混乱
性的な出会いがあったことに脅威を感じるクライアントもいれば、衝動的で破壊的な性の出会いに耽溺するクライアントもいます。
6、信頼関係の破損
カウンセリングは信頼関係によって成り立ちます。その高い信頼を損なることによって、クライアントの生涯にわたって害が及びます。カウンセリング関係に従事する人すべてに対し不信感が増します。この不信がやがてすべての人間関係に影響を与えるでしょう。
7、情緒不安定
性的な関係を持ったことにより感情的に押しつぶされるような圧迫感を抱き、それがトラウマとなり、繰り返し経験されます。
8、抑圧された怒り
相手のカウンセラーに怒りを感じても、カウンセラーに対する愛着の気持ちや傷つけることへの恐れなどで、それが適切に表現できません。このような出来事を報告しないように脅迫されている場合、カウンセラーを崇拝したり、あるいは完全な依存関係などによって事実が報告できない場合もあります。
9、認知機能不全
トラウマになっている経験のフラッシュバックなどによって注意力や集中力に悪影響が出ます。
10、自殺の危険の増加
信頼と疑い、愛着と恐れなどの感情に揺れ動き、孤立し、信頼関係を破損されたことにより援助を求めることを恐れるようになります。これらが複合して、自殺の危険性が増加します。
(引用終了)

カウンセラー(指導者も含む)でクライアント(受講生)に「好きだ」と言いたいと思ったら、上記に照らして大丈夫かリスクがないか考え我慢する。
クライアント(受講生も含む)から「好きだ」と言われたら、上記リスクを考えて「転移」として扱い、自分自身に言われたと思わない(思いたい気持ちは認めるけれど)。もし真の愛だと両者が確信したとしても、すぐに進まず1年や2年は冷却期間を入れ、冷静になり、さらに上記リストを見て本当に大丈夫か相談をして次のステップに進む。
そのくらいのイメージはしていたほうがいいということです。
倫理の内容を書きながら、これだけの大幅な引用は著作権でいう引用のルールを超えているかもなー、でも原文を大幅に要約すると趣旨を誤解させるリスクもあり著者の名前を付けると申し訳ないけどどうしよう、などと思いながら、著作権違反と正しい情報をカウンセラーや指導者に伝えるのとどちらを優先するかでこれだけ長い引用をしました。ある意味倫理はぶつかりながらよりよい道を探ることが必要です。
この出版社がここで引用した内容(この引用部分は結局ハーリとコウリーの二重引用になる)に対し、著作権処理をしているなら水野先生は別に倫理的ジレンマを感じませんが、もし一般的引用の無料のルールの下でやったとすれば、私と同様の迷いがあったと思います。
とりあえず、いい本ですので購入をお勧めします(訴訟になった際、失った利益と得た利益との差額が賠償額になる)

水野先生によれば、一般に危害のある多重関係とは
(1)クライアントに物品を売る
(2)カウンセリングが終了した後に性的関係を結ぶ
(3)社交の場や個人的なパーティにクライアントを招待する
と3つをあげています。
特に害が著しく大きいのが(2)。

倫理というのは先人が失敗してくれた教えです。何をするとどんな結果につながるのか、初めてで渦中にいるとなかなかわかりません。
ここでは「カウンセラー」と書いていますが、意味するところは心を扱う専門的関係性の人間は相手に対し圧倒的にパワーがあるということを自覚する必要があるということ。カウンセラーだけでなく、スーパーバイザーや指導者もほぼ同様の注意が必要です(相手の心が揺れていて不安定であれば構造は同じ)。
日本ではスーパーバイザーや指導者の倫理はまだ十分明文化されていませんが、リスクについては理解をしておいてください。

私も指導者として、研修を主催すれば(1)に引っかかるのでパワーを悪用していないか注意しないといけないし(あ、昨日メールの返事で今度勉強会するよ、と返事したら「絶対行きます」と返事来てたけど、無理するなと言っといた方がいいかな、とか反省するし)、(2)の性的関係も過去は全くなかったけれど、これからも絶対ないとは言えないのでリスクを十分理解(不要な準備かもしれないけど、いざその場になっても雰囲気に流されないように一応)しておこうと思うし、(3)はクライアントにはやらないようにしよう(多分スーパービジョンや指導関係はそれほど悪影響ない)。しかし、(3)は受講生とカウンセリングをすると、その受講生だけ扱いが困るということ。可能な限り受講生とのカウンセリングは他の人に代わってもらおう。

クライアントやスーパーバイザーとの性的関係なんて、自分にはそういうことは関係ない、と思うかもしれませんが、現実にアメリカではけっこう発生しています。陥りやすい罠。
自分たちの関係は愛であり、大丈夫、とカウンセラーは思っていますが、カウンセリング関係で傾聴していると素敵な人だと思えていたのが、現実に付き合うと思っていたイメージと違い受け入れないし勝手だしダメなところが見え始める(1時間の面接では出なかった自分を見られる)。そうすると、「カウンセラーのパワーを乱用し自分の操を奪った」と訴訟されるのです。
大体訴訟されるは男性でしかもけっこう年齢高い(社会的に認められている人々)。
うーん、私も気を付けよう。

転ばぬ先の杖、先人の知恵、大事にしましょうね。



posted by キャリア研修センター浦安 by田中春秋 at 10:21| Comment(0) | TrackBack(0) | キャリアカウンセラー:必要な能力・知識・資格 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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