2012年04月09日

プロフェッショナルとしてのキャリアカウンセラー

プロフェッショナル(職業)としてのキャリアカウンセラーというか、キャリアカウンセラーの価値と報酬について私(田中春秋)の考えを書きたいと思います。
キャリアカウンセリングの場合、直接のクライアントと報酬のスポンサーが異なっていることが大半(直接クライアントが支払う場合以外)ですから一層難しい状況があります。
まず、報酬と言う点では、評価できない組織ではプロとして価値を大きくしたとしても報酬に影響はありません。これが一番大きな要素でしょうか?特に公的な機関で働いている方はそういう環境が多いかもしれません。組織の目的が「苦情の発散口を作る」や「相談できる場所を作ると約束したから実施している」というような場合は、最低限のコストでサービスが存在するだけでスポンサーは満足するのですから価値も何もあったものではない訳です。
こういう場合、報酬のことは忘れてクライアントへの価値をセルフモチベートで高めていく、というのも一つの方法ですが、望ましい姿はキャリアカウンセリングの成果の量がスポンサー自身の得(利益)につながることを理解させ、結果の量(成果)を増やす工夫をした方がスポンサーにとっても有利だ、と納得させる事です(難しいですけどね)。
以下、評価する意欲がある組織の場合、何が価値に繋がるのかを考えてみたいと思います。
基本はクライアントとスポンサーと両方のニーズに応えた部分だけが職業としての報酬に繋がるという事。
魚屋の販売職だったら、うまい大根や醤油を紹介してあげても、報酬は魚が売れた額に連動する。お客さんが喜んだから価値ではなくて、顧客さんが喜んで魚はここで買う、と顧客が増える(購買行為が増える)ことにより結果として魚が売れる量が増えることが価値。
その意味では、魚の料理の仕方を教えてお客が喜んでも、この店の魚が高いからよその店で買う、や、鮮度が悪いからよその店で買うのでは職業としての価値にはなりません。教えてくれることへのお返しとして、その店が買うや他の顧客を紹介するというお返しがあり、結果として魚が売れる量が増えて価値。いいことをするだけだと、職業ではなくボランティアです。
(自分の価値や対価を同じ魚屋で大きくするためには、経営に対し手ごろな価格の魚の仕入れや鮮度管理の徹底、更には魚関連商品例えば大根や醤油の一部仕入を提案し、実現することができれば同じ行為でも報酬に繋がる価値が大きくなります)
では個別の領域ごとだとどうなるでしょう?

<企業内キャリアカウンセラー>
クライアントニーズ:様々な問題を抱え悩んでいる
スポンサーニーズ:悩んでいるために成果行動が落ちているので改善してほしい(あるいは病気による長期の成果行動停滞や社員退職による成果損失を回避したい等)
とすると、気持ちを分かってもらったでは物足りなくて、問題解決に向けたクライアントの行動として、成果行動(能力向上への投資等含む)が増えて初めて価値をスポンサーは感じるという事です。
カウンセリングの結果として、「クライアントの成果行動の増加」×「変化の保持期間」の面積が価値のベース。プロへの報酬の考え方は、行動増加による会社の利益増加額×期間×変化発生者への分配率みたいな感じでしょうか?(そこまで真面目に考えている発注者はいませんが理屈上)
病気の停滞防止は何も問題が発生してないうちは評価が難しいですね。既に一定率で発病していたのであれば、カウンセリングの仕組みを入れたことによる発病数減少数×発病による利益損失額×変化発生者への分配率かな?
出産・介護での危機の乗り越えのテーマだと、そのまま危機に直面し退職してしまう場合にクライアントが生み出す会社の収益と危機を乗り越え(一定期間成果が落ちたとしても)退職までに生み出す会社の収益との差×乗り越え支援者への分配率・・・
評価が見えやすいのは成果行動の増加ぐらいです。
カウンセリングを受けて、上司が「あいつ変わったなー」と評価し(人事に伝え)、その前向きな行動が長続きする、その期待値(全員変化しなくても目立つ変化があれば期待値として予算化できる)に対し報酬を支払できます。
とすると、カウンセラーは単なるカウンセリングスキルだけでなく、その会社やその職種のコンピテンシーを理解しており、コンピテンシーの高め方が分かり、変化が長持ちするための工夫(現場の障害の乗り越え方や上司を味方にする仕掛け等)をした方が価値が大きくなる、ということです。
<斡旋カウンセラー>
クライアントニーズ:自分に合った会社でできるだけいい条件の会社に転職したい
スポンサーニーズ:優秀な人が欲しい
ここも両方のニーズを満たすことが大切です。スポンサーの顔を見てもっとクライアントには能力を発揮できる会社があると思うのに無理にクライアントをその会社に押し込むと、入社してもまた次の転職をしてしまう等の問題が起こります(でも斡旋会社からすると次の受注が入るから嬉しいという面もありますが、長期的には会社のブランドが下がっていきます)。
クライアントの顔だけを見て、スポンサーである企業からするとあまり活躍できないのではないかと思いながら転職時の年収が高い会社に無理に押し込むと、結局クライアントはその会社で落ちこぼれ、クライアントの長期の人生やスポンサー両方でマイナスです。
結局はそのクライアントが活躍できる、能力を最大限発揮できるという会社とマッチングすることが大事という事です。では価値は何か?
クライアントにとってはその斡旋会社で得ることができる仕事とハローワークで得ることができる仕事の今後の職業人生での満足度(今後の生涯賃金差だけでなく、仕事のやりがいやライフの充実度含む)がどれだけ違うか、ですが、スポンサーである企業にとってはハローワークで採用する人に比べ、どれだけ成果を上げてくれるか(成果×年数)です。その差に対する仲介会社への分配率がどの程度か。まあ基本は年収×*%と相場があるので会社への報酬は計算しやすいです。
ということは、募集企業が求めるコンピテンシーを理解し、クライアントのコンピテンシーとうまくマッチングでき、更に、クライアントがそこで頑張るのだという意欲喚起ができているかどうかが価値を大きくするために有効という事です。
あわせて、月に何人という掛け算が価値に連動するし、会社からの分配でも大きな評価要素になります。
<ハローワーク>
クライアントニーズは斡旋と同じ
スポンサーニーズは失業者への給付や生活保護等支出を減らしたい、が主です。
「労働の権利を有し義務を負う」これを実現するのがハローワークの意義。つまり、就労が難しい人を如何に就労させるかが特に大事という事です。
でもここがすごく難しい部分です。
ハローワーク業務を民間に委託した場合、実績を見せる為に決まりやすい人(別にそれほど支援しなくてもいい人)にシフトして決まりにくい人はつい放置する傾向(あるいは自分のところに来ないように回避したがる傾向)があります。
ハローワークの存在価値のアピールというために、民間委託していないハローワークが実行する場合でも「どんな手段を使ってでも就労が難しい人を如何に就労させる」ではなく、実績をアピールするために「ハローワーク求人の中での就職(実は中高年は縁故の方がいい仕事が決まるがハローワークでは目標の関係であまり推奨しない)を中心に支援」してしまう。
生活保護の場合東京だと4人家族で25万円/月程度かかりますから、年間コスト300万円ぐらい。これをどれだけ減らせたか、あるいは防止できたかがスポンサーである国にとっての成果になります(更に税金が入り、負担していた医療費も減る)。
実はこの分野は本当は価値が大きくて、40で生活保護でそのままになるであろう人が自立化うまく成功すれば、年300万円×20年=6000万円税金の支出が減るということです。
(イギリスでは支援機関を一部民営化し、その例のワーキングリンクスではハローワークでも決まらない長期失業者を就職・定着させると75万円/人程度の成功報酬だった)
生活保護が今200万人。これを100万人に減らせれば300万円×100万人=年間3兆円前後税金の支出が減るという事です。
しかしこの分野はマクロで考えるとマッチングの椅子取りゲームでは問題解決できません。自分の目の前のクライアントを1人就職させたとしても、それはもともと誰かが入る椅子だったのであればマクロの失業者が減るわけではありません。本来なかった椅子を増やさないとマクロは改善しないのです。
企業が強くなり雇用全体が増えるのが早道なのですが、もう一つの方法は個人の能力が向上し海外に流れていた仕事を国内に呼び込む。個人の能力向上が雇用を作る、という考え方です。同じ島国のイギリスでは明確にそういう方針(職業能力向上)で労働施策が作られていますし、本来(今十分やれていないけれど)日本のジョブカードも個人の能力向上を目的で導入された仕組みです。
ただ、ハローワークは現状一番最初に書いた「評価できない組織」が大半の状態だと思っていますので、マネジメント体制を組み直しした方が良いと個人的には思っています。
(書いていて思ったのですが、スパンサーの国としては「就職する」ことが大事であり、「自分に合った仕事」や「できるだけ高い収入」はあまり気にする必要がありません。ただ、適材適所の方が結果成果が上がり国力向上になるという理念はあるので無視はしませんが、重視はしていないということです。適材適所でないとその会社に長持ちせず再度労務コストかかるので不適応を起こしそうなマッチングはダメにしても、高いレベルまでは組織の目的上必要ないという事です。個人をとことん支援したい現場のカウンセラーが苦労する理由が分かる気がします)

他にも大学等ありますが、大学だと学校のニーズは「大学のブランド向上=卒業生が世間評価の高い企業に入社できている&就職浪人しない」がメインでしょうから、一部の優秀なんだけど芸術の道に行きたいとか、優秀なんだけどベンチャーで起業したい以外は、クライアントである学生のニーズとスポンサーである学校のニーズは合っていると思います。

最後に、報酬や価値を考える場合、スポンサーが個人か組織かによる違いを説明します。
組織の場合「期待値」で価値を評価し、報酬を払うことができます。価値が大きい人もいれば小さい人もいていいのです。
ところが「個人」の場合、「期待値」では払えません。自分がどうなのか、を考えると、(一部のビジネス感覚がある人を除いては)「最低でも実現できる価値」でしか払いたいとは思いません。だから個人相手のサービスは報酬が極端に小さくなります。
宣伝等で期待値を大きくすると、そうでなかった人の不満が大きくなります(裏切られた感じ)。
「クライアントとスポンサーの両方のニーズを満たす」というのは「クライアントに最善を尽くしていないのでよくない」と感じるカウンセラーは、プロとして「クライアント本人から報酬をもらいクライアントだけを満足させるサービス」をやればよいのですが、現実にはそれで生活するのは至難の業です。「自分がどんな相手でも提供できる最低限の価値」と「自分が提供できる平均の価値」と比較すると何分の1でしょうか?理屈上は個人向けサービスに特化するということはその比率程度には収入が減る覚悟をするという事です。
ただ、今後ますます個人のニーズも高くなると個人的には予想しています。今この選択をどちらを選ぶかで生涯賃金数千万違う。自分の満足度や家族の満足度も大きく異なる、こういうシーンは増えてきています。
今あるサービスはスポンサーの意向もあるのでどうしても私本人の希望を最大限満たしている訳ではありません。私は数10万ぐらいならプロの支援に対価を払ってよりベターな選択を選びたいと思っていたものです(昔ですけどね)。当時は労働時間は長くてもいいから、毎年1か月の長期休暇が取れて海外旅行に行けるような仕事に移りたかったなー。スキー場の食堂経営とかいいかも、とか考えていました(今は独立したので自分次第で1か月休むと決めて海外に行けばいいのですが、実現できるようになると不思議と欲望が収まってしまいました)。実際に相談しなかったネックは誰に相談し、どの程度の価値が期待できるか全く情報がなかったこと。でも今でのそういう相談誰にしたらどの程度の期待値があるかイメージできないですねどね。

文章化すると色々気づかなかったことが見えてきます。整理してみると、企業が欲しいと強く願う人、このままだと税金を投入しないといけなくなりそうな人、そういう人はスポンサーがついているのですが、いわば「普通の人」は窓口はあり相手はしてくれるのですが、「より自分を活かす」「より自分に合った」という部分は実は自己責任になっているという事です。もっとちゃんと面倒見てくれ、と言いたくなる気持ちは分かりますが、納税者として考えると、ハローワークの職員に対し「仕事は手に入るけどもっと自分にぴったりのもの」に時間をかけるよりも、自分の税金が高くなる要因になっている「仕事につけなくて困っている人」にパワーシフトしてほしいと思います。「食べ物がなくて困っている人」の方を「この料理自分の口に合わない」と言っている人より優先しますよね?好みじゃないのはすみません、自分で味付けするなり、お互いに料理の皿を交換してもらえませんか、と。
ということは、やっぱりキャリアカウンセラーの個人向けサービスのニーズがあるわけです。求人情報はハローワークにあるけれど、自分の好みのものをどう探すか、は「個人負担で」と言いたいわけですから。ただ前述したように収入はあまり期待できませんから、定年後の半ボランティア的な位置づけになるかもしれません。あるいは、個人では得手不得手や相性があるので平均と最低の差が大きいですが、チームになりお互い支えあうことで差を小さくすることができれば職業にできるかもしれません。

あくまで私の考えを書いてみただけですので、意見ある方どうぞコメントください。楽しみにしています。
posted by キャリア研修センター浦安 by田中春秋 at 11:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 企業:キャリア施策事例総論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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